ようやく緊急事態宣言も明け、ほんとうにひさしぶりに友人たちと外食に出掛けたのでした。
向かったのは荒木町。
駅で言いますと曙橋と四谷三丁目の間に位置するあたりですね。
自動車がひしめきあう新宿通りから坂を下ればそこは無数の看板に明りが灯る酒と料理の街。かつては花街だったと言う風情をそこはかとなく感じる、趣のある街並みです。
この日訪れたのは初訪問となる「荒木町たつや」。
8席のカウンター席は予約で数ヶ月先まで埋まっていると言うプラチナシート。
ぼくも人並みにいわゆる予約困難店などと呼ばれる飲食店に行ってみたいと言う気持ちは有るのですが、なにせ根がものぐさなものですから、実際に電話を掛けまくったり予約のためだけに店を訪問したり、と言った行動がなかなかできません。
この日もグルメな友人がだいぶ前に予約してくれていたお席におじゃましたのでした。ありがたや。
「荒木町たつや」は2021年のミシュランガイドでも一つ星を獲得。
こちとらミシュランガイドに掲載されたからと言って訪問の際に気負うことはありませんが、ご主人の石山竜也氏がかの名店「神楽坂石かわ」一派の出身との事前情報に襟を正す思いで暖簾をくぐったのでした。
先付は毛蟹と「みず」。
「みず」は秋田で好んで食される山菜のひとつ。
しゃきしゃきした食感が食欲を呼び覚ましますね。
秋刀魚の春巻とウドの花。
春巻の半分は秋刀魚と松茸、半分は秋刀魚と香茸と言う趣向です。
香茸もその名の通り香りの良いきのこですが、華やかさでは松茸でしょうか。
この夜の椀種は松茸と甘鯛でした。
存在感の有る大きさと素晴らしい香りの松茸、旨味をたっぷりと湛えた甘鯛に負けず印象に残る芳醇な出汁の味わいは前半の料理のハイライト。
こちらは出汁漬けにしたいくら。
お造りはくえ、焼き霜造りの鰆、真鯛。
いずれも甲乙付け難い味わいでしたが、この日は甘みのある真鯛が非常に美味でした。
焼きものは金目鯛。
繊細なお造りの味わいから一転、力強くまた香り高いひと品は鮮烈な印象を残します。
炊合せには鴨と芹、そして11種類ものきのこ。
鴨の鴨らしい味わいを引き立てるのはこちらも滋味深い出汁の風味。
そしてその滋味深いお出汁は雑炊に。
これ、お代わりしたくなります。
柿と栗を使った甘味で本日のコースは完成。
いずれの料理も素材の持ち味を最大限に活かした、繊細かつ確かな技術が伺える上質なものでした。
お会計はだいぶ良い感じで日本酒を頂いて1万円代半ば。この料理のクオリティを考えたらお値打ち価格ではないでしょうか。
四季折々に訪問したくなるような佳店ですが、予約がなかなか取れませんので次回の訪問はだいぶ先になりそうです。
───────────────────
・店名 荒木町たつや
・住所 東京都新宿区荒木町10
タウンコートナナウミ 1階
・電話 03-6709-8087
・備考 予約はお早めに。
───────────────────